ストレスを感じやすい現代社会を背景に、日本人では5人にひとりの割合で、神経性胃炎になるという状況です。神経性胃炎になりかけている予備軍も含めると、その数はさらに増加します。神経性胃炎とは、ストレス由来の現代病とも言えます。
女性より男性の方が、比較的かかりやすい病気です。仕事の重圧や社会的な責任を負うことを強いられて、慢性的にストレスをかかえることが多いからです。胃は感情の変化を受けやすい臓器です。「第二の心」と表現されるくらい、精神的な負担などを敏感に受け止めやすいのです。
軽い胃痛やムカつき、胸焼け程度では、病院の診察を受けず放置して様子をみるという方が多いようです。神経性胃炎は自律神経の乱れが大きく関与しているのですが、そのことを自覚できることはありません。
身体のあちらこちらで目に見える不調が起きだして、「気がつけば、ひどく悪化していた」ということになりかねません。日常的に感じるストレスの度合いや、ちょっとした身体の変化に耳を傾けてあげることが大切です。
胃が痛いという症状があり検査をしてみたが、炎症などの異常が見つからない場合もあります。
身体上に現れる症状としては、胃の痛みや不快感、食後の胸焼けやムカつき、吐き気、食欲の低下、少量の食事でお腹がいっぱいになる、胃酸が逆流する、不眠などがあります。それらの症状を緩和しようと胃薬を服用しても、効果が得られないこともあります。
胃酸の出過ぎから胃潰瘍を発症することや、逆に胃の働きが鈍ってしまい、消化不良を引き起こすこともあります。その症状そのものがストレスになり、さらに悪循環となります。
自律神経の調整がうまくいかないことから、情緒的な面にも支障が出てきます。気分が落ち込む、強い不安に襲われる、体がだるい、何事にもやる気が起こらない、など「うつ症状」を発症するというように、深刻化していくこともあります。
神経性胃炎の原因の中心となるのは、日常の「ストレス」によることが多いです。どの程度ストレスを感じているのか、そのレベルを数値で表すことはできないので、自分の置かれている精神状態を客観的に知るのは難しいことかもしれません。
実際に気持ちが落ち込んでいるとわかっていても、生活のために「自分が疲れきっていることに気づかないフリ」をして、ごまかしてしまうこともあります。しかし身体は正直なものです。さまざまな症状となりSOSを発信してきます。たかが胃の痛みと軽く考えずに、きちんと向き合うようにしてください。
ストレスを発散しようと、アルコールの摂取量が増えたり、暴飲暴食をしたりして、それが原因で胃に負担をかけてしまうこともあります。消化物が増えるのも、ストレスを受けるのも、胃にとっては良くないことです。結果として、胃は胃酸の分泌を促し、神経性胃炎や胃潰瘍を発症してしまうのです。
神経性胃炎が悪化して、胃潰瘍やうつ病にまで及んでいる場合は、ひとまず一番つらい症状を鎮めることが治療の優先課題となります。痛みをとる、炎症をおさえる、充分な休養をとる、などです。
神経性胃炎の症状に対しては、主に内服薬を用います。症状によって、効能の異なる薬があります。鈍くなった胃の働きを助ける、増えすぎた胃酸を中和させ落ち着かせる、胃酸そのものを抑える、胃の粘膜を保護する、全体的に胃腸を整えるなど、それぞれに適応する薬があります。
胃腸薬があまり効かないという人もおられます。薬そのものが、胃に負担をかけるようでは本末転倒です。その場合は、副作用が比較的少ない漢方薬による治療も方法のひとつです。ただしリスクがまったくないわけではないので、薬剤師や医師の指導が必要です。
神経性胃炎の治療として最も肝心なのは、原因となっているストレスをどう扱うかです。何が原因かがはっきり認識できている場合は、生活環境を変えるなどして、ストレスを取り除いてあげること。それが不可能であれば、新たな対策を考えなければなりません。状況によっては、自分ひとりで対処するよりも、臨床心理士や精神科医のカウンセリングを受けることも必要になってくるかもしれません。
現代は生きにくい世の中ではありますが、できるだけ心の風通しを良くして、メンタル面にも配慮しておきたいものです。どのような生き方をしても、ストレスがまったくないということはありえません。上手に処理していく自分なりの方法を見つけることが大切です。
神経性胃炎は、ストレス・疲れ・頑張りすぎなどで疲れてしまっている自律神経の働きを治療すれば改善する病気です。どうぞあきらめないでください。